佐賀の小学校からケニア・ナイロビ日本人学校へ。ナイロビ日本人学校・平田先生インタビュー
2023年4月からケニアのナイロビ日本人学校に赴任した平田先生。ケニアに来てまだ半年ではあるものの、日本とケニアの違いを理解しながら、子どもたちに教える姿は超一流。そんな平田先生に、日本人学校の募集に応募した経緯や日本とケニアの違い、大切にしているモットーをお聞きしました。
「子どもが好き」×「海外への憧れ」海外の日本人学校への挑戦
「単純に子どもが好きというのが原点としてあり、スポーツを通じて教えたりするのに面白さを感じ、先生になりました。」
子どもへの教育にやりがいを感じ、教員となった平田先生。在外の日本人学校に挑戦したきっかけは海外への憧れにありました。
「元々、海外で仕事をしてみたいという夢がありました。先生になって、そういった機会はなかなか無いと思っていましたが、在外の日本人学校であれば海外で仕事ができると知りました。先生をやりながら海外で仕事ができるのはチャンスだと考え、応募しました。」
「無事に審査を通過し、ナイロビ日本人学校へ赴任となりました。希望地は選ぶことができないため、文部科学省からの辞令でナイロビへ派遣となりました。こっちに来て半年が経ち、充実した生活を送ることができています。」
不便をプラスに捉えて工夫しながら実施する教育を
ケニアで充実した生活を送れていると語る平田先生。しかし、日本とは全く異なる環境下で日本の教育プログラムを提供するのは困難も伴うそうです。
「モノが無い、届かないというのはよくある問題です。私は小学校教育と体育を専門としていますが、日本と比較して道具が充実していません。あるもので何とかしたり、自分で作ったりという工夫を行っています。また、教科書や問題集などのテキストが日本から期限内に届かないことも多いです。日本で出版しているテキストを取り寄せるのは時間がかかりますし、急に必要になってもすぐには準備できないです。先の予定を前もって計画しておくのは非常に重要となります。」
平田先生が担任を務める3年生の生徒数は3人。2学年の生徒が同じクラスで授業を受ける「複式」と呼ばれる授業スタイルを取り入れ、子供たちに教えています。日本では1クラス30人の担任をしており、日本時代からの違いも感じるそうです。
「授業の作り方については、日本にいた時よりも多くの時間を使って考えるようになりました。複式で行う場合、3年生が学んでいる間に4年生は何をするかを考えなくてはいけません。教材を読んで授業の組み立てを考える際の視点は、日本時代から大きく変わりました。子どもたちが自ら学びを作る学習を目指しています。」
子供たちの学ぶモチベーションを通して見える日本とケニアの違い
ケニアに来て半年。教育という視点で見ても日本とケニアの大きな違いを感じるそうです。
「日本は教育のシステムがしっかり構築されていると改めて感じました。文部科学省から教育の内容が降りてきて、これからの未来を予測して新たな教育が作られています。そういった教育の仕組はかなり整備されていると実感します。ケニアは発展著しい国ではありますが、そういった教育の部分は課題が多く、何か関わることができないかと考えています。」
「ただ、ケニアの子どもたちの方が、日本の子どもたちよりもイキイキしているのが伝わってきます。狭い教室の中で、目をキラキラさせながら学ぶケニアの子どもたちの姿に衝撃を受けました。ケニアの教育は先生が教える詰め込み教育ですが、それでも子どもたちはやる気を出して授業を受けています。それぞれの子どもたちはみんな夢をもっていて、そこに向かって努力している印象があります。
一方、日本の教育は、子どもたち自身に考えさせる学びに変わってきています。子どもが自分で考える力を身に付け、夢や目標をもっていけるように、学びのモチベーションや学び方をどのように育んでいくかが重要だと改めて感じています。これから子どもたちが、イキイキと自ら学ぶことができるように支えていきたいです。」
日本人学校という環境だからこそ経験できる価値
教育システムと子供たちの学びへのモチベーション。この半年で日本とケニアの違いを肌で感じてきました。日本ではなかなかできないような教育の経験をケニアではできるそうです。
「少人数だからこそ、1人1人にきちんと目を向けることができるのはメリットだと感じています。日本では30人のクラスを担任していて、1人1人に向き合う時間はどうしても少なくなりました。ナイロビ日本人学校だと少人数のクラスなので、子どもたちと向き合う時間を充分に取れますし、小学1年生から中学3年生まで学年関係なくコミュニケーションを取れるのはいい点です。」
「また、日本全国から子どもたちが集まり、いろんな背景や価値観を持った方がいらっしゃいます。新しい考えに触れることができるので面白いですし、地方の学校ではなかなか無い環境なので刺激にもなっています。」
”苦あれば楽あり”
平田先生に大切にしているモットーをお聞きしました。
「私のモットーは、【苦あれば楽あり】です。祖母がずっと言っていた言葉で今でも頭に残っています。最初は【苦しい=キツイ】というイメージでしたが、自ら積極的に行動しいろいろな経験を積めば、さらに良くなっていくという解釈へ変わっていきました。小さい時は、宿題を早く終わらせれば楽しい時間が増えるくらいの感覚でした。社会人になり、辛いことも含め様々な経験を積むと、次のステップへ繋がったり、価値観や視野が広がったりしていくと実感しました。その時、祖母が言っていた意味が分かったような気がして、今でも大切な言葉となっています。」
経験が最大の学び。だからこそ挑戦を
ナイロビ日本人学校での経験や日本とケニアの違い、モットーをお聞きしてきました。最後に若者へのメッセ―ジをお聞きしました。
「とことんいろいろな経験をしてください。経験は最大の学びです。だるいと感じたり、面倒くさいと思ったりすることもあると思います。ただ、何か行動を起こしたら絶対にプラスの面があります。最初は気乗りしないことでも、やってみたら新しい学びがあったり、次に繋がるコネクションが生まれたりします。やったことないことでも、他人から言われることでも、行動に移してみて経験を積むのは物凄い財産です。あらゆることに挑戦して、いろいろな経験をしてみてください。」
平田 昌志
「子どもに関わる仕事がしたい」という想いから大学卒業後は佐賀県の教員採用試験に合格し、佐賀県の小学校で教員をスタート。海外への憧れもあり、在外日本人学校の募集に応募。審査を通過し、ケニアのナイロビ日本人学校へ2023年4月から赴任。ケニア在住の日本人の子どもたちに日本型教育を提供されている。3年生クラスの担任。担当教科は小学校教育・中高体育。(2023年12月現在)
☆ナイロビ日本人学校HP:https://xn--eckyd2a0hu74oe5pmzq0kcc1c.com/