What's up 日本

中南米で5年間の駐在を経験⇒MBA取得中|人生を変えた社会主義国・キューバでの駐在【IESE在学 小林 靖】

What's up 日本

入社3年目から駐在を経験し、現在はMBA取得中の小林さんが語る“行動することの重要性”

総合商社へ新卒入社後、エクアドル・キューバでの駐在を経験し、現在はスペインのIESEビジネススクールでMBA取得中の小林さんにインタビューをしました。キューバでの駐在時代は、ゼロから支店を設立。日本とは全く異なる社会主義国でビジネスを創り上げた経験が、MBA取得を後押ししました。そんな小林さんに、ご自身のキャリアと若者が大切にするべき考えを伺いました。

総合商社に入社し駐在も経験。現在はスペインのビジネススクール・IESEにてMBA取得中。【写真右・本人提供】

日本人がいない土地でゼロからビジネスを創った駐在時代

入社3年目で舞い込んだ“海外駐在”

入社3年目で海外駐在することになった小林さん。学生時代から海外で仕事をしたいという想いがあり、総合商社へ入社されました。入社後から駐在まではどういった経緯があったのでしょうか?

小林さん:一刻でも早く海外駐在をしたかったので、入社1年目から上司に「海外駐在に行かせてください」と伝えていました。とにかく言い続けたところ、入社3年目からチャンスをいただき、エクアドルに駐在することになりました。同期と比較してもかなり早いタイミングで駐在をスタートできました。

当初は2年で日本に戻る予定でしたが、駐在中に期間の延長を上司に直談判しました。丁度そのタイミングで、キューバプロジェクトが社内で立ち上がりました。自らそのプロジェクトに立候補し、エクアドルでの2年間の駐在後、入社5年目からはキューバに駐在することになりました。

社会構造が日本と異なる社会主義国、キューバで「0⇒1」の挑戦

カストロ兄弟とチェ・ゲバラが主導した革命が有名で、アメリカから経済制裁を受けているキューバは社会主義国家。資本主義国家の日本とは全く違う社会構造の国で、ビジネスをゼロから創り上げるチャレンジをスタートさせました。

小林さん:キューバに新しい会社を創設し、自分が責任者を務めました。私は唯一の駐在員で、自分以外に日本人はいません。会社経営の知見やノウハウが無い中、ビジネスを新しく創る必要がありました。

―1番大変なことは何でしたか?

小林さん:日本や世界で当たり前とされている資本主義のビジネスが、社会主義のキューバでは全く通用せず、社会主義システムを理解するのに苦労しました。取引相手先はキューバ政府となります。キューバは最貧国のひとつで、政府が相手でも不払いは頻繁に起き、商品を納品してもお金が支払われないことは何度もありました。リスクをどのようにヘッジして対応するのか考えるのにも苦労しました。

―日本では考えられない事例だと思いますが、どのように解決していきましたか?

小林さん:日本政府を巻き込んでビジネスをする仕組みを作り、困難を突破しました。誰も踏み込まなかった市場へ自分が行き、新しいビジネスを創り上げたのは大きなやりがいとなりました。もちろん大変なこともありましたが、キューバという社会主義国で、20代でこの経験をしている日本人は殆どいなかったかと思います。誰もやったことがないことをやるのはエキサイティングな経験であり、まさに「商社マン」という仕事ができました。

キューバでの駐在が自信にも、その後の人生の転機にもなりました。【本人提供】

駐在で身に付いた“他者への想像力”

キューバ駐在での経験をイキイキと語る姿が印象的な小林さん。キューバでは3年間駐在し、計5年間の中南米駐在を終え、日本本社へ戻りました。駐在での経験は日本でどのように活かされたのでしょうか?

小林さん:駐在を経験し、他者に対する想像力が豊かになりました。エクアドルやキューバは日本と比較し、何もかもが違いました。文化はもちろんのこと、人々の性格メンタリティーなども異なります。そういった人たちを巻き込んでビジネスを作るためには、まずはその人をしっかり理解する必要があります。

それは日本においても同じで、日本人とはいえど個性があり、考え方や価値観は人それぞれです。海外であろうと日本であろうと、誰かをを巻き込んで仕事をする時には、想像力を働かせて相手を理解しながら仕事を進める必要があります。その点は海外駐在で鍛えられ、日本でも大きな武器となりました。

駐在で身に付けた「他者への想像力」が日本でも大きな武器となりました。【本人提供】

キューバで体感した“超エキサイティング”をもう一度

5年間の駐在から日本に帰国し、本社で勤務していた小林さん。一念発起してMBA取得に向けて動き出したきっかけは、キューバでの経験でした。

小林さん:キューバでの駐在は本当に楽しかったです。大企業に在籍しながら、全く知らない土地でゼロから会社を作って経営をする。まさに自分が一番イキイキしていた瞬間でしたし、それを将来もやりたいと思うようになりました。本社に戻ってからもやりがいのある仕事をさせてもらいましたが、キューバでの“超エキサイティング”な経験を忘れられず、起業・経営者になるという夢を持つようになりました。

起業や経営について調べていたところ、サーチファンド※1という起業の仕組みを知りました。自分は、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような天才的な頭脳やカリスマ性があるようなタイプではありません。サーチファンドのスキームは、天才的な閃きではなく、既存事業を大きくしていく能力が求められるので、大企業にいた自身の経験を活かせると思い、サーチファンドの仕組みを通じて、起業家・経営者を目指すことにしました。サーチファンド自体、日本では認知度が低く、殆どノウハウがありません。サーチファンドの研究が進んでいる海外の大学院を調べたところ、現在通っているIESEが“サーチファンドスクール”と呼ばれる程、その分野において権威のあるの学校だったため、IESEへ進学しMBAを取得することにしました。

日本では事業継承問題が深刻化しており、2025年には大廃業時代が到来し、多くの中小企業が倒産する可能性があると言われています。私はサーチファンドの仕組みが日本でも広がれば、事業継承問題の解決にも繋がり、さらには中小企業の生産性向上や、大企業一極集中等の社会課題の解決にも繋がると考えています。MBA卒業後は、日本だけでなく海外の投資家からも資金調達を行った上で、日本でサーチファンド起業に挑戦する予定です。

もちろん新たな挑戦には不安が付き物です。不安はあるけれども、ある程度の負荷に耐え、壁を乗り越えた時に一番幸せを感じるということを過去の経験から学びました。そういった達成感を感じる瞬間を今後も増やしていきたいですし、挑戦してなんぼの人生なので後悔のない生き方をしていきたいです。

世界中から集まった学生と日々MBA取得に向けて学んでいます。【本人提供】

自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ

この地球にはステキな世界が無数に広がっている

日本では今のところ馴染みのないビジネスの仕組みである“サーチファンド”に注目し、スペインのビジネススクールで学びながら日本でのキャリアを考えている小林さん。長年の海外経験で世界の面白さを感じており、日本の若者にも見て欲しい世界があります。

小林さん:もっと多くの人に海外に行って欲しいです。世界の素晴らしさや面白さを知らずに死ぬのは勿体ないと思います。もちろん日本は素晴らしい国ですし、私も大好きですが、海外は行けば行くほどその広さを知らされます。自分が知らなかったり、想像もできなかった世界が日本の外にあって、それに触れるだけでも視野が広がるし、圧倒的に自分を成長させてくれます。最初は海外旅行でもいいですし、会社の駐在を狙ってみるでもいいと思います。日本人は内向き志向とも呼ばれますが、チャンスは探せばいくらでもあるので、自ら行動を起こして自分の目で確かめて欲しいです。

中南米をはじめ多くの都市に足を運んだ小林さん。IESEがあるバルセロナもステキな景色が広がります。

人生一度きり。だからこそ行動を!

最後に若者へのメッセージをお聞きしました。

小林さん:興味があったり、やりたいことがあるなら行動に移して思い切って飛び込んでみましょう。私の好きな言葉で、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉があります。日本人は完璧主義で、何かできるようになってから挑戦する人が多い気がします。海外に行くにしても、英語を完璧にしてから行こうと考えてはいないでしょうか。できているかどうかは主観でしかないし、そういった考え方では一生チャンスは訪れないと思います。逆に先に海外に行ってしまえば、現地で英語を学ばざるを得ず、自力でその場をどうにか乗り切るしかありません。先に行動を起こして機会を創り出し、その機会によって自分を変えるマインドセットを持つと、世界はもっと広がると思います。足りない知識はいくらでも行動を起こしてから身に着けることができますし、ChatGPTなど知識を得るためのツールはいくらでもあります。人生一度きりです、チャンスが来るのを待つのではなく、興味のあることに対して実際に行動してみてください!

小林 靖

早稲田大学卒業後、総合商社へ入社。入社3年目からエクアドル駐在を経験し、入社5年目からはキューバにて新規ビジネスの創出を経験。5年間の駐在後は、日本本社にてM&Aや海外新規案件に従事。2022年より会社を休職し、IESE business schoolにてMBA取得中。(2023年12月現在)
☆小林さんLinkdIn:https://www.linkedin.com/in/yasushi-kobayashi-1895b6218/
☆IESE日本人在校生サイト:https://iese-japan.com/

※1サーチファンド:経営者を目指す個人が主導して中小企業のM&Aを行い、自ら経営に携わる活動です。優秀な経営者候補と魅力的な中小企業をつなぐ、社会的意義のある投資の仕組みです。サーチファンドに取り組む経営者候補はサーチャーと呼ばれ、優秀な人材にとっての新しいキャリアとして世界中で拡大を続けています。【サーチファンドとは? | サーチファンド・ジャパン】https://www.searchfund.co.jp/about-searchfund

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