インタビュー

余命10年。明日死ぬとしたら、あなたは何を残しますか?【native. Founder/CEO 川本 寛之】

インタビュー

「native.card」x IKGAIをベースとした真剣交際アプリnative. Co-Founder/CEO 川本 寛之氏インタビュー

大学卒業後、化粧品メーカーのマーケターをはじめ様々なご経験をされた後、現在はインドでマッチングアプリ開発を行う川本さん。コロナ期間に持病が悪化し、「余命10年」と宣告されました。壮絶な人生を歩み、死と向き合いながら“今”を生きている川本さんに、インタビューを実施しました。

これまでの壮絶な人生については以下の動画でも語っております。

余命10年の宣告

起業されるまで、日本とインドで様々な会社に属しながらキャリアを築いて来られた川本さん。そこには、川本さんなりの考えがありました。

山口百恵さんと同じように、ピークポイントの時に辞めるマイルールを持っています。山口百恵さんはタレントとしてピークの時に引退をされました。その生き様に魅了されたのと、不器用でもいいから一生懸命に取り組むという、危ない世界で教えて頂いた考え方。そして、中途半端には辞められないという決意を集約したものが、ピークポイントの時に会社を離れ、新たなキャリアを歩む考えです。コンフォートゾーンを抜けた瞬間が、一番自己成長できている瞬間なので、この考えを大事にしながらキャリアを歩んできました。

インドと日本でキャリアをピポットさせてきた川本さん。第一子も生まれプライベートも充実していた最中、難病が川本さんの身体をむしばんでいました。

「コロナ期間に健康診断を受けた際、もともと持っていた多発性嚢胞腎※1という難病が悪化していることが判明しました。先生に「どれくらい生きれそうか」と聞くと、「10年は大丈夫だと思う」と返ってきました。それが私にとっての余命宣告に近い心象を受けました。残り10年=3650日しか生きられないかもしれない。

「残された命を考えた時、2つのシナリオを立てました。シナリオAは、引き続きベンチャーキャリストとしてスタートアップ投資を行い、数千万程度の金融資産を残す。シナリオBは、金融資産は残せないかもしれないけれど、子供たちをインドに連れてきて現地で経験資産を積んでもらう。私が棺桶に入る瞬間、見たい景色はシナリオBで、子供たちが大人になった時に挑戦する姿は美しいと思って欲しい。残された命を尽くして、インドでチャレンジすることを決意しました。」

目の前の人のために何ができるか

余命宣告後、インドで再挑戦することを決意した川本さん。しかし、はじめの一歩をどのように踏み出すかを悩んでいました。

「残りの人生が10年として、何回バッターボックスに立てるかを考えました。一般的にスタートアップが創業から上場するまでは約8年かかる。挑戦できる回数は1回か2回。自分の人生をどこにベットするか悩んで、ガチガチになっていました。」

「そのタイミングで、佐々井秀嶺さん※2というインド仏教の最高指導者にお会いしました。利他の精神で目の前の人に対して尽くされている姿勢を見た時に、自分の考えていた枠組みは違うと実感しました。ベンチャーキャピタルの経験からスタートアップのモデルやスケールばかり考えており、目の前の人に対して自分ができることを考え切れていませんでした。そこで、改めて目の前の人に自分が尽くすことを考えました。自分のやりたいことや与えたい価値、世の中のニーズを掛け合わせ、真剣交際のマッチングアプリ事業を立ち上げました。」

「和製ガンジー」のような生き方を表現されている川本さん。話の節々からみなぎるエナジーを感じました。

人生2度は死ねない

インド仏教の最高指導者である佐々井秀嶺にお会いし、利他の精神を意識されるようになりました。余命宣告と利他の精神。そこから、“死”についてある考えを持つようになりました。

私は2度死にたくはありません。1度目は肉体の死。2度目は精神の死です。精神の死は誰からも忘れ去られてしまった時に訪れる死です。極めて利己的に振舞うと誰からも忘れられてしまう。外国人の多くが行きたい・住みたいと思う日本に生まれ育ち、与えられてきたモノが多い日本人だからこそ、恩返しをしてこの世を去りたい。

「少子高齢化や人口減少も進み、一人当たりの若者に課せられた使命も大きくなっています。今後の未来のためにも、日本に対して何か恩返しするために1秒1秒を大切に過ごしていきたいです。死んだ後でも、川本を思い出すとちょっとチャレンジしたいな~と思ってくれたら自分の命日が特別な日となる。そして、私はみなさんの心の中に生き続けることになる。これは単なるエゴかもしれませんが、そうなってくれたら嬉しいなと思います。」

インドに根付くジュガードの精神

キャリアにとどまらず、人生について、死について深い考えを持つ川本さん。昔からインドに根付いている考え方に魅力を感じています。

「ジュガードの精神※3をリスペクトしています。ジュガードとは、あるものだけでまずはやっていこうとする精神性で、今の時代に最適化されている価値観だと思います。今はVUCAの時代と呼ばれる不確実性が高く、PDCAサイクルのプランに重点を置いて考えても、その仮説が数日後に棄却されることもあり得ます。その点、ジュガードの精神で、ある程度のプランを立てたら、とにかくチャレンジする姿勢をインド人は持っています。PDCAの反復サイクルを高速で回し、チャレンジしている点から日々刺激を受けています。」

WORLD REPORT CHANNELにてインドのリアルを語っております。

大胆に、そして壮大なチャレンジを

インドで日々悪戦苦闘しながら、挑戦をされている川本さん。日本人は、周りの目を気にしすぎている印象を受けています。

日本人には、本当に到達できるか分からない、ヒリヒリするような壮大な目標を立てもらいたいです。日本特有の文化として、平均台の上をはみ出ることに対しての拒否反応が極めて強いです。スタートアップ界隈でも、投資家からの目を気にして満足度80点くらいの絶妙なプランを立てる方が多い印象を持っています。」

一方インド人は、他人の目を気にせずチャレンジします。日本には一本しかない平均台がインドには何本もあり、飛び移ることも許容され、多様な物差しを包摂する文化です。インド人の他人の目ではなく、自分の目で判断して大きなチャレンジをする姿勢は見習うべきです。例え失敗しても、人手不足だから求人は山ほどあります。だからこそ、日本でチャレンジをくすぶっていたり、ためらっている若者は挑戦してみてください。検討している挑戦が壮大で、すごく怖いものと思う気持ちは分かります。自分が仮に泳げないとして、水深10メータープールに飛び込むようなものだと考えるかもしれませんが、実は1.5メーターで足が着く水深だったりする。挑戦に対して勝手に自分の脳内で恐怖や不安を増大させているだけで、案外自分で歩けるし、なんとかなるようなものです。

他者との比較についてと、残りの人生を何に注ぐか決まっていますか?

最後に、日本の若者へメッセージを頂きました。

「まず、ネガティブになるような比較は止めていただくと良いかもしれません。SNSやYouTubeでキラキラしている人を見て、自分は全然ダメだと思う必要はありません。全員がHIKAKINになれるわけでは無いし、ネットに踊らされるべきではない。目の前の発生事象を多角的、多面的に捉えて、鳥の目みたいに客観視してみてください。自分が今行っている比較は、ポジティブな比較か、それともネガティブな比較かを認知できるといいと思います。ポジティブな比較は、比較後の感情が、自らを突き動かす燃料となっているはずです。紙に悩みを書き出すでも、ヨガを行うでも、誰かに壁打ちするでもいいので、自分を客観視できる習慣を作るとポジティブな比較ができ、良い方向に進むと思います。」

「また、“死”について考えていただくと良いかもしれません。私は、死と向き合ったことで自分の命を何に注ぐかが見え、パーソナルミッションができました。自分の最期が決まることで、目の前の生き方が鮮明になります。この世界には、生と死の瀬戸際で生きている人が沢山います。アフリカでもインドでも、ストリートチルドレンが山ほどいるのがこの世界です。バラナシに行けば、死体が火葬される瞬間を目にすることができます。もちろん、“死”はとても怖いし、逃げたいし、目を瞑りたくなります。でも、自分の“死”を意識し、人生を何に使うかを考えていただくことで眼前の“生”が色鮮やかに変化するかもしれません。皆様の人生が明るい方向に転じますように、心より祈念しております。
また、インドのスタートアップシーン、起業に少しでもご興味お持ちいただけましたら、お気軽にDMくださいませ。」

 

川本 寛之

native. Founder/CEO
D2Cブランドでマーケティング、HR系メガベンチャーでインド子会社を創業、経営に従事。インドのデカコーン企業OYO日本創業メンバーとして事業開発、人事、PM、グロースを経験。独立系VCにて、インド投資チーム、CVCファンドの立ち上げ、投資、バリューアップを実行。2022年にインド(バンガロール)に移住。2023年4月より、「和製ガンジーとして、不安、恐怖、悲しみに苦しむひとりでも多くの人をエンパワーし続ける」というパーソナルミッションの元、現地の20-30代の若者向けに、「native.card」という統計占いx IKIGAI概念をベースとしたポケモンカードの人間版をベースとした真剣交際マッチングアプリを創業。
native.cardの発行はこちら(生年月日入力後に、数秒で下記native.cardが発行されます)
http://bit.ly/3IIYZJc

 

川本さんのメディア露出と各SNS

YouTube
【前編】余命10年の男が挑む。インドで占いマッチングアプリを展開したい【川本 寛之】[428人目]令和の虎

note:https://note.com/hiro14710

Facebook:https://www.facebook.com/hiroyuki.kawamoto.92

 

※1多発性嚢胞腎:常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)とは慢性腎臓病(CKD)の原疾患の一つです。左右両方の腎臓に大小様々な大きさの嚢胞(嚢胞液という液体の詰まった袋)ができ、それが増えて大きくなっていく、最も頻度の高い遺伝性の嚢胞性腎疾患です。
多発性嚢胞腎について|国立国際医療研究センター

※2佐々井秀嶺:インドで活動している日系インド人(一世)の僧である。ナーグプルのインドラ寺(インドラ・ブッダ・ヴィハール)にて住職を務めている。カースト未満の身分のダリット(不可触賤民)の人々を仏教へと改宗させるアンベードカルのインド仏教復興運動の中心人物の一人となっている。

※3ジュガード:ジュガード(Jugaad)とは、ヒンディー語で「革新的な問題解決の方法」という意味。つまり、限られた資源のなかでもアイデアを働かせて新しいモノを想像し、即席の解決方法を見つけることである。ジュガードはインドに古くから根付く考え方で、英語に訳すとハック(Hack)が近いと言われている。創意工夫の精神を表す言葉として、インドの人々の日常に溶け込んでいる。
ELEMINIST|インドに根付く創意工夫の精神「ジュガード」 イノベーションを生む6つの原則とは

 

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