What's your motto

「やりたいこと」と「オススメされるもの」を掛け合わせる思考術【日独産業協会・アーント 沙羅】

What's your motto

日本とドイツの産業を紡ぐアーント沙羅さんのモットーとは?

昔から日本との繋がりも強く、ヨーロッパ域内だとイギリスに次いで日本人の在住者が多いドイツ。今回は、ドイツ人男性とご結婚され、日本とドイツの産業を繋ぐお仕事をされているアーント沙羅さんにインタビューしました。これまでのキャリアと日本とドイツの違い、大切にされているモットー(座右の銘)をお聞きしました。(2023年11月現在)

ドイツでのキャリアパスを選択

ドイツとの出会いはたまたまだった?!

大学在学時からドイツ語を専攻され、言語を学ばれたアーントさん。しかし、ドイツとの出会いは偶然でした。

アーントさん:高校時代から英語が好きで、大学でも外国語を学びたいと思っていました。言語選択をする際にもちろん英語も選択肢に入っていましたが、帰国子女やバイリンガルの方と比較すると、どうしても越えられない壁がある気がしました。既に英語が体に染みついて、スタートラインが違うので同じ土俵には立てない。妹が中学時からフランス語を勉強していて、「お隣のドイツはどうかな~」と考えました。結構大きい国ですし、経済的にも発展している印象を持っていたので、なんとなくではありましたがドイツ語を専攻しました。特別ドイツ語が良かった訳ではありませんし、他の言語を学んでいた可能性もありました。

大学入学後はドイツ語に関係する修士を取り、さらに学ぼうと博士課程に進みました。拠点を変えてドイツ語をもっと学びたい欲があったので、2016年から徐々に準備を進め、2017年に日本の大学院に在籍しながらドイツへ留学しました。

移住・結婚を機に「学び」だけのドイツ生活ではなく、他の経験を求めたキャリア選択

―ドイツに移住した翌年にドイツ人の旦那様とのご結婚を経て、変化などはありましたか?

アーントさん:アカデミックな道を進んでいたものの「本当にこのままでいいのか?」という想いが芽生えるようになりました。ドイツで博士号を取っても日本に戻るか分からないし、ドイツで研究者を目指すのはかなり厳しい現状がありました。また、経済やビジネスの世界はどんな感じなのかを見たいと思うようになりました。そのタイミングで結婚をし、ビザも柔軟に対応できることになったので、ドイツで働くことにしました。スタートアップの学生バイトとして働くことになり、これがキャリアのスタートとなりました。

働き始めて1年後に、日本から奨学金を頂けることになったので、2年間は大学院で再び研究をしました。奨学金が切れた2020年に、日本語とドイツ語を話せる強みを生かせる仕事を探し、日独産業協会に入社しました。

現在は、日本とドイツのビジネス分野で活動されている会員さんのネットワーキングをお手伝いするプラットフォームを運営しています。非営利団体ですので、サービスを提供する形ではなく、イベントの開催やネット上でのコミュニケーションの機会を提供しています。ドイツと日本、企業と個人それぞれ会員がいらっしゃいますので、両国にいらっしゃる会員の皆様が国を越えてつながり合い、情報交換ができるような場を作るということで、他の活発な会員様と一緒に様々なネットワーキングの企画を行っています。
また、企業やパートナー団体の皆様が主催するイベントの広報のお手伝いや、求人情報の公開なども業務として行っています。さらに、日独の分野でキャリアアップを目指したい両国の若い世代に向けたイベントや情報共有の場を提供する、というのも私たちの活動目的の一つとなっています。

アカデミックの世界からキャリアチェンジをし、現在は日独産業協会にて日本とドイツの産業を繋げる仕事をしています。

国際結婚で重要なのは「圧倒的コミュニケーション」

ドイツ人の彼とご結婚されたアーントさん。文化や価値観などの違いがある国際結婚の結婚生活についてお聞きしました。

アーントさん:文化や育った環境が違うのをお互いに分かった上で結婚が成り立っていますが、話し合いはとても重要です。モヤっとすることがあれば必ず言うようにしています。言いたいことを言い合うコミュニケーションがしっかり取れていれば、国際結婚でも大丈夫だなと、この5年間で感じました。

とはいえ、日本人はディスカッションが得意ではなく、カップル同士でも自分の意見や思っていることを伝えない場合も多いと思います。空気読む文化があり、余計なことは言わずに喧嘩をなるべく避けようとしますし、私も夫と付き合い始めた頃は日本人の感覚で接していました。そうすると彼は「なんで黙っているの?何を考えているの?全部言って欲しい」と言ってきて新鮮味がありました。日本に比べると、ドイツでは思ったことをはっきり言う傾向があるので、当初は喧嘩も多かったです。

お互いが身に着けてきた文化を強制する必要はないと思いますし、日本人の「察する」感覚を押し付けるべきではないです。ただ、「察して欲しい」と伝えることで、「普段から気を付けたら分かってくるかも」と捉えてくれる人もいます。そういったコミュニケーションを重ねることで、「なるべく言うようにしよう」と思いますし、建設的にお互いを分かり合えるようになります。

日本の「飲み会文化」は羨ましい!

―ドイツで就職しご活躍されていますが、仕事面におけるドイツの特徴はありますか?

アーントさん:ドイツは、体調不良で仕事を休むのが容易です。体調不良で仕事をする方が迷惑がられますし、無責任と思われます。無理して仕事をしたり、他の人に風邪をうつすと会社全体の効率が下がるという価値観があるように感じます。なので、病欠などの制度はしっかりしています。

リフレッシュ休暇のような長期休暇も取りやすく、引継ぎさえしてくれれば2~3週間休むことも了承されます。長く休むことが普通なので引継ぎを任せる同僚に嫌な顔はされません。休暇の最終日は少し憂鬱ではありますが、同僚に会えるのも楽しみですし、リフレッシュして帰ってくるので溜まっている仕事も自然とはかどります。

また、残業は非常に少ないと思います。残業をすると勤務時間内にできないと思われ、会社も他の人へ仕事を振ることを考えます。ドイツの労基局にあたる機関も労働時間の報告を厳しくチェックしていますし、会社によっては残業するのにも申請が必要なので、残業が自然とできない環境ができています。

一方、日本の社外で繋がりを持てる関係や職場で助け合う文化は羨ましいです。ドイツは良くも悪くも仕事だけの関係です。一歩職場を離れれば他人のような感じを受けますし、職場で友達は作りづらいので、新しい人と知り合って関係を築く機会が極端に少ないです。職場でも自分の仕事さえやればいい考えがあるので、困った時にたらい回しにされることも多々あります。日本だと良くも悪くも職場の先輩や同僚と飲みに行く機会は多いですし、社外でもプライベートの趣味が合う人と友達になれると聞きます。職場内でも連携があり、お互い思いやりを持って助け合う関係は、ドイツで働き出して気づいた日本の良い点です。

「働きやすい会社の制度」はドイツの方が優れていると感じる反面、職場での人間関係は日本が羨ましいと感じるそうです。

Wenn Schon denn schon

アーントさんのモットー【Wenn schon denn schon】

ドイツ語の研究に邁進され、堪能な日本語とドイツ語を活かした仕事で、両国の発展に寄与しているアーントさんのモットーは何でしょうか?

アーントさん:私のモットーは【Wenn schon denn schon】です。文脈にもよりますが、日本語に訳すと「やるならとことん!」のようなニュアンスとなります。この文を使う時に私は、周りからの意見も受け入れてみようか、というような場面や意味を含めて使ったりもします。他人からオススメされるものは自発的に選ぶ可能性が低いですし、その機会が再び訪れるかは分からないので、基本的には受け入れてやるようにしています。普段通りだと、自分がいいと思うものしか選ばない傾向がありますし、世界が狭くなりがちです。他人が良いと思うことを自分が良いと思うかは分かりませんが、自分じゃ絶対選択しないものをトライすることで、新たな発見があるかもしれませんし、新しい習慣になるかもしれません。頭は一つしかないので、他人の意見を受け入れ、世界を狭めないようにしています。そしてそれを取り入れたらとことんやる、ということもまた違った形で実現できるように思います。

人との関わりを軸としたアーントさんが描くキャリアパス

ー日本に戻るかどうかもあるかと思いますが、今後のキャリアパスはどのようにお考えですか?

アーントさん:人と関わることができる仕事を軸にキャリアを考えています。ずっと学問の世界で生きてきて「自分は人と関わるのが不得意」と考えていましたが、いざ働き出して、十人十色の伝え方・話し方に面白さを感じ、「人と関わるのが好きなんだ」と気づきました。それ以降、「誰かのステップアップのサポートをしたい」と思うようになり、人をサポートするキャリアを歩みたいです。例えば、HR系で従業員ステップアップや学生に対してキャリアサポートに邁進するのもいいですし、新たなスキル習得を応援する一環でドイツ語の先生もやってみたいと思います。学生時代には全く興味が湧きませんでしたが、そういった活動をやってみたい気持ちが芽生えました。

最近になって、「日本で数年働いてみるのも良いかも…」と思うようにもなりました。日本で働いた経験が無いので経験してみたい気持ちもありますし、日本とドイツの働き方のいいところを発見できると思います。一貫するのは「人と関わる仕事」を軸に、あらゆる選択肢を取り入れながら、面白いと思える挑戦を選択したいです。

やらない後悔よりやった後悔を!

―最後に読者へメッセージをお願いします。

アーントさん:「やらなかった後悔よりやる後悔」を大切にしてください。将来のことを考えても、どうなるかなんて分かりません。私もドイツ語の勉強を始めた時は、ドイツに来るなんて思って無かったし、ましてや6年も住むなんて想像もしていませんでした。だからこそ、その時の感覚で興味があるものはやってみてください。「あの時やっとけば良かった。」と思っても過去には戻れません。自分の感性にもっとオープンかつ敏感になって、やってみたいことにチャレンジしてみてください。

 

アーント 沙羅

中央大学卒業後、京都大学大学院へ進学。ドイツ語の研究を専門とし、修士号を取得。博士課程の一環で2017年に渡独し、ドイツ語の研究に勤しむ。ドイツ人男性との結婚を経て、2020年に日独産業協会へ入社。日本とドイツを結ぶ最大規模のビジネス・プラットフォームを運営中。(2023年11月現在)

日独産業協会HP:https://www.djw.de/ja/

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