What's up 日本

産業におけるインドと日本の架け橋を育てる・AOTS手島 栄慈インタビュー

What's up 日本

一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS) ニューデリー事務所所長 手島 栄慈さんインタビュー

一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)へ2001年に入職。日本国内にて外国人の受入れ・研修や経理などを経験後、2022年よりインドのニューデリー事務所に駐在されご活躍されている手島さん。インドで約1年過ごされ、日々の業務や生活で感じる違いやそれぞれの良さ、外から見る日本についてお聞きしました。

文化・商慣習の違いと関係構築について

―日本で約20年お仕事をされ、昨年からインドに来られた訳ですが、日本とインドの違いはどのような点に感じますか?

日本とインドでは全てが違います。インド人は、日本では社会的にやってはいけない、良くないと言われることを普通に行います。文化が違うので仕方がないですが、日本人からみると一見不誠実、無責任に見える行動をとることがあります。ですが、インドではその行為は一般的であり問題とされていません。そのことを知っておき、インドで働く日本人はそれぞれの立場や状況によって、どこまでを受け入れるかを考える必要があります。

―日本とインドでは文化が全く異なる中、ビジネスを行うことは大変という印象を受けます。手島さんはインド人とどのように関係構築を行っていますか?

まず初めに直接出向き、1・2時間話をして、お互いの人となりを把握するインド式の関係構築を行っています。インドでは1番最初に細かい個人情報を聞かれます。結婚しているかや家族構成、過去の経歴など漏れなく事細かです。お互いの情報をさらけ出すことで人間関係を構築しています。

そういった人間関係を構築しても書類を期限内に出して来なかったり、納期やアポを飛ばしたりします。ですが、お互いをさらけ出した上で関係構築できた人に強く言われると、インド人は対応してくれます。これは他の国でも言えることだとは思いますが、それぞれの国の文化に合わせて関係構築をした上にビジネスは成り立つと考えます。

インドに来て約1年。手島さんが感じるインドの魅力と問題点とは?

―1年間のインド生活を踏まえ、インドの魅力はどのようなところに感じますか

インドは急成長しており、力をつけているところがあるので、国民は自信を持ち始めています。また、国のことも大好きで、お祭りの時とかのインドの旗が掲げられ、どこに行ってもインドの国旗があります。まさに、自信を持った国民が急成長の真っ只中を過ごしており、勢いがある国です。

―人口増加や経済成長のニュースは日本にも入っており、勢いは感じるものがあります。一方、インドの課題はどのような点ですか

まだまだ取り組まなくてはならない課題がある一方で、経済発展が達成されたことにより舞い上がってるようにも見え、危うい気がします。課題とは例えば男女差別やカーストなどの人権問題、貧困問題、宗教対立、衛生面などです。そのあたりを解決した上で国として発展していくなら問題ないのですが、そうでない中「自分たちは大国だ」「世界一だ」などと言っていると、見捨てられた人や見落とされてしまった人が救われず、社会の不均衡が放置されるのではないかと心配しています。また、そのような問題を誰も積極的に改めようとする気が無いようにも見えます。このまま大きくなれば反動も大きくなるので、何かしらの問題が大きくなって弾けることはインドにとってもよくないとは感じています。

ニューデリー事務所で奮闘されている手島さん。他にもバンコクとジャカルタにも海外拠点があります。

インドから見た日本とは?

―海外駐在を1年経験され、外からみた今の日本にどのようなお考えを持っていますか?

自分たちであまり意識してないですが、国全体が綺麗で、社会はスムーズに回っています。不満もあるとは思いますが、他の国よりはかなり出来上がっている国です。依然として世界3位の経済大国で、他の国に比べて非常に住みやすく、安全かつ綺麗で、そういった点ではかなり優れている国であるので、もっと自信を持っていいと思います。

しかし、意思決定が遅く、意思決定できる地位にいるのが年齢層が高い人ばかりなのはあまりいい状態ではないでしょう。これからを担う若い人の意見が、若者が出した意見であるとの理由で採用されず、地位の高い方への“忖度”の方が重要になるのは良くない文化かと思います日本人は書類も間違えないし納期や締め切りも守る。インド人よりも効率的に仕事できるはずです。それなのにインド人から見ても意思決定が遅いと言われてしまうのは、組織の変革や新陳代謝が進んでいなかったり、現場で働いている若者に意思決定権がなく、内部の確認にばかり時間がかかる点も原因と思います。

経済面・精神面の両側面からメッセージ

―日本で長年活躍された後に、現在はインド駐在されている手島さん。最後に若者へのメッセージをお伺いしました。

インドに限らず他の東南アジアの国など、発展している国のエネルギーを旅行でもいいので、1回見てください。実際に行ってみたら、もしかしたら人生観が変わる経験をできるかもしれません。

日本国内で頑張るのもいいとは思いますが、それはそれでリスクはあります。物価は上がっているが賃金は上がっていないといった状況から、経済的な理想を叶えるためには他の賃金の高い国で働いた方がいいという意見も出てきています。経済成長のメリットを得られにくいのが今の日本だと思いますので、日本で働くことは経済面からするとリスクかもしれません。

ただ、先ほども言った通り、日本の時間や約束を守るなどの文化や、社会性は財産だと思います。その点、海外で生活することは、日本の当たり前は通じず、いろいろな圧力を感じながら仕事をする必要もあります。そのような精神面で考えると、日本で働いた方がいい人もいるかと思います。一度発展している国のエネルギーを体感し、経済面・精神面のどちらを重要視するかを踏まえた上で、海外にも選択肢があるというのを伝えたいです。

 

手島 栄慈

大学卒業後、一般財団法人海外産業人材育成協会へ入職。中部研修センター(現在は閉鎖)でのコーディネーター、東京での経理、別案件のプロジェクトチームの実装を経験後、2022年よりニューデリー事務所・所長としてインド駐在中。(2023年9月現在)
☆一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS):https://www.aots.jp/

 

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