What's up 日本

フィンランドでベンチャーキャピタルを設立し、気候変動に取り組む【NordicNinja VC 宗原 智策】

What's up 日本

気候変動のようなピンチをチャンスに変え、ワクワクする日本・世界を作りたい

国際協力銀行(JBIC)にて投融資や駐在を経験した後、2019年にフィンランドで海外のベンチャーキャピタル(VC)の世界に飛び込んだ宗原さん。ディープテック※1やクライメイトテック等※2のスタートアップに投資するファンドであるNordi NinjaVCを設立し、日本企業をからお預かりした資金をヨーロッパのスタートアップに投資しています。海外でクライメイトテックに注力する理由と、日本への想い、若者へのメッセージをお聞きしました。

宗原 智策

慶應義塾大学経済学部卒業後、政府系金融機関にて、メキシコにおける再エネファンドの設立や欧州向けのベンチャー投資をリードした後、2019年に NordicNinja VCを設立。フィンランドとイギリスを拠点に、北欧中心に欧州地域でのベンチャー投資を行う。フォーカス領域はClimatetechを含むサステナ関連全般で、投資先の社外取締役として日本市場への参画を含めたビジネスディベロップメントを支援。デンマーク・コペンハーゲンに拠点 がある北欧と日本を含むアジアを繋ぐアクセレーターNordic Asian Venture Allianceの理事も務める。(2023年10月現在)

・NordicNinja VCのHP:https://nordicninja.com/
・宗原さんのX(旧Twitter)@TomosakuS:https://twitter.com/TomosakuS?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

日本と海外の架け橋となり、大企業を変える

―現在の活動内容を教えてください

2019年に設立したNordicNinja VCでは、クライメートテックやディープテックなどの環境や新技術を支える事業を行う会社に投資をするファンドとして活動しています。日系VCではヨーロッパ最大規模となり、運用資金額は300億円を超えます。私を含めた4人のパートナー制で、現在は10人のメンバーでフィンランド・スウェーデン・エストニア・イギリスの4拠点で活動しています。

―フィンランドでVCの挑戦を決意した理由を教えてください。

NordicNinja VCのコンセプトは2017年に着想しました。日本で海外と日本を繋ぐファンドの仕事をしていたものの、日本やシリコンバレーでは多くの日本人がVCをされており、違う土俵で勝負するために、空いてるマーケットを探していました。アジアやイスラエル含め、世界において日本企業がスタートアップとあまり繋がっていない地域を検討した結果ヨーロッパに繋がり、当初はエストニアに着目しました。エストニアは当時から電子国家として有名で、福岡市くらいの人口からスタートアップやユニコーンが多数存在していました。また、周辺のフィンランドやスウェーデンも同じくスタートアップが輩出されていました。事前調査で足を運んだ際には、アジア人がいること自体が珍しく、日本の資金はあまり入っていませんでした。だからこそ、日本としてのバリューが出せると思い、北欧でVCを立ち上げることに挑戦しました。最初の拠点として、日本や周辺国へのアクセスを考え、フィンランドを選びました。

―日本のVCの先例が無いヨーロッパで事業をスタートされ、当初は大変ではありませんでしたか?

今でこそ、北欧はイノベーションハブやスタートアップエコシステムが有名となっていますが、当時はそういったイメージはなく、日本企業の多くは北欧とイノベーションが繋がらず、簡単ではありませんでした。特にイノベーションの文脈では、多くの日本企業の目がシリコンバレーに向いていることも一因でした。

―創業当初の困難をどのように乗り越えましたか?

フィンランドには「チャレンジし続ける限り失敗は存在しない」という考えがあります。何も達成せずには日本へ帰れないですし、1,2年で結果が出るようなものではないので、5~10年はやってみようと覚悟を決めて頑張ることができました。

―現在、日本の大企業がファンドに参加されていると思いますが、どのような影響を与えたいとお考えですか?

NordicNinja VCが架け橋となり、日本の大企業のオープンイノベーションを推進させたり、マインドセットを変革することで、日本をポジティブにするきっかけを作りたいと考えています。スタートアップの話をするとシリコンバレーやイスラエルに目が行きがちですが、ヨーロッパのスタートアップエコシステムも非常にユニークな存在です。加えて日本のプレゼンスが弱くなっているからこそ、それを弱点ではなく、むしろチャンスだと考えて、当地のイノベーションと日本を上手く繋げ、日本が変わるきっかけ作りを目指せればと思っています。

日本とヨーロッパを繋げ、日本が変わるきっかけ作りを目指す。(宗原さん提供)

若い世代の未来を残す=気候変動を止める

―環境問題や気候変動は世界の大きなテーマとなっていますが、宗原さんは現在の地球環境についてどのようにお考えですか?

やはり気候変動は世界的にも大きなテーマになっていると実感します。日本はもともと地震や台風などの自然災害が多く、災害が増えても大きなインパクトを感じないかもしれません。しかし、ヨーロッパや特に北欧だと、ほとんど自然災害が無かったのにも関わらず近年異常気象が頻発しているので大きなインパクトがあります。

―成し遂げたい未来やビジョンをお聞かせください。

気候変動を心配することなく、人間が様々な活動ができる世の中を作りたいです。そういった世の中に貢献するようなスタートアップテクノロジーや、大胆な挑戦を志す起業家を探し、投資をしていきたいです。また、日本はソフト、ハード、実は人材も含めものすごいポテンシャルを持っている国なので、そのパワーを使いながらイノベーションを起こしていきたいです。まだまだ発展途上ではありますが、やりがいを持って取り組んでいます。

日本が再興するためのヒント

―日本は経済成長が鈍化し、多くの問題があります。日本が再興するためにはどのような動きがあれば良いと考えますか?

自分のコンフォートゾーンを飛び出して挑戦する動きが活発になればいいなと思います。フィンランドはよく「起業家精神が旺盛」と言われますが、こっちの人は起業が大変なものだと思ってはいません。勉強・会社員・起業などの色んなパズルが組み合わさって「キャリア」を完成すると考えています。起業して失敗しても大学院で学んだり、就職した後に再び起業にチャレンジされる方も多いです。ヨーロッパだと「シニア起業」も多く、若い人だけではなく、幅広い世代に様々な選択肢をもっと作るのが重要です。日本も、失敗を失敗として見るのではなく、失敗を許容する社会や、セカンドチャンスを与える文化を作り上げることができれば、より良くなっていくのではないでしょうか。セーフティーネットの基盤がある幸運な国に生まれた特権を活かして、チャレンジしていくという考えです。

―日本政府もスタートアップ5か年計画を掲げ、海外展開を見据えた起業を推進しております。これから起業される方も海外を目指した方がいいと考えますか?

別に日本が悪い、海外がいいという議論ではなく、海外を見据えた方がマーケットは大きいので、チャンスが広がります。また、海外でも日本と同じような課題があり、それを解決するようなプロダクトを作っているのであれば飛び出せばいいと思います。起業を勧めているものの、起業家は本当に大変ですし、寝れない日もあります。起業も海外進出もどちらも大変で、険しい道のりには変わりないので、せっかくなら大きいことにチャレンジした方がいいのではという考えです。

日本が好きだから飛び出してみましょう!

―最後に日本の若者へメッセージをお願いします。

日本が好きだから飛び出してみましょう。マイノリティ経験は人を強くします。独自の視点や価値観が生まれ、外から日本を見る視点が増えるのでマイノリティ経験をして欲しいです。海外に暮らしたり、留学したりするのもマイノリティ経験ですので、コンフォートゾーンを飛び出して挑戦してみてください。たとえ飛び出して上手くいかなかったとしても、居心地のいい日本が待っていて、いつでも帰ることができます。1度飛び出してみてマイノリティ経験を積んで、新しい視野を広げてみてください。応援しています。 

 

※1クライメートテック:クライメートテック(気候テック)とは世界的な気候変動の問題を解決するため、CO2排出量の削減や地球温暖化の影響への対策を講じる革新的なテクノロジーのことを指します。2023年版のカオスマップでは、12のセクターからクライメートテック企業を取り上げています。出典:【2023年最新版】クライメートテックカオスマップ公開・アスエネメディアhttps://earthene.com/media/565

※2ディープテック:差別化された高度な科学・エンジニアリング技術のことで、たとえば、ロボティクスや半導体技術、量子コンピュータ、新素材や二次電池、バイオテクノロジーなどの技術分野を指す。
出典:ディープテックとは?日本経済の鍵を握るディープテックスタートアップの創出(前編)・Innovation Leaders Summit
https://ils.tokyo/contents/deep-tech-startups-vol1/

 

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