What's up 日本

自信は無いけど不安も無かったブラジル挑戦/自分がブラジルで広めた「すき家」を越えるために

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“打倒すき家” ブラジルで飲食店を経営中の藤原さんインタビュー

日本から遠く離れたブラジル・サンパウロで日本食レストランを2店舗展開し、ブログやYouTubeチャンネルにて日本食の魅力を広めている藤原さん。前職では、「はやい・安い・うまい」で御馴染みの「すき家」をブラジルで急拡大させた功労者。そんな彼が、ブラジル駐在中にすき家を運営するゼンショーホールディングスを退職し、起業したワケとは?

会社員だと自分のやりたいことは実現できない…。なら自分でやるしかない

偶然だったブラジル駐在

大学卒業後はゼンショーホールディングスへ入社した藤原さん。すき家のエリアマネージャーとして主に東北地方を5年間転々とした後、東京本部で人事に配属されました。

「新卒採用に携わっていたところ、人事部内で【海外研修制度の新設】プロジェクトが立ち上がりました。10数年前のゼンショーホールディングスは、中国・タイ・ブラジルにすき家が数店舗しかなく、海外展開を伸ばしていく流れがありました。その一環として、海外人材を育てる方針のもと新しい制度ができました。」

同じ人事部内で立ち上がった海外研修プロジェクトに対し、自分が手を挙げるべきという感情が生まれます。

「新卒採用担当者として海外研修制度について就活生に伝えているものの、自分は制度を利用していないし、そもそも海外に行ったことがない。同じ人事部内で新しいプロジェクトの募集がかかっているのに、自分たちが手を挙げなかったら、自分に嘘をついているなと思いました。そこで、自ら手を挙げ、海外研修制度に応募しました。社内審査を通過し、ブラジルへ数週間の派遣が決まりました。」

ブラジル・サンパウロには大規模な日本人街が存在。ここを拠点にすき家の店舗数が増えていきました。

前日まで元気だった恩師の死がチャレンジの活力に

海外研修制度終了後は駐在に切り替わり、ブラジルですき家の店舗拡大を任された藤原さん。ブラジルと日本本社でのやり取りに苦労を感じていました。

「ブラジルではある程度意思決定ができる役職を務めました。とはいえ、大きい会社の会社員。自分のやりたいことが全部通る訳ではありませんでした。現地法人の社長や日本本社ともぶつかることが多く、日本から下される評価もなかなか上がりませんでした。」

もどかしい日々を送っていた中、恩師の死を突然知らされ、新しい挑戦を決意しました。

「ブラジルでモヤモヤしていた中、日本時代にお世話になった恩師とも呼べる人が亡くなったというニュースを聞きました。前日まで元気だったみたいで、急に亡くなったそうです。それを聞いた時に、”自分もいつか死ぬ。今のうちにやりたいことをやらないと”と思いました。

「会社員は、他人の資本で事業を行っているため、自分のやりたいこと全てを実現できないのは当たり前です。ブラジルで上手くいかないことが多く、サラリーマン向いていないと思っていましたし、自分の資本であれば自分のやりたいことを実現できると考え、独立を決意しました。

居酒屋COCORO。開店前の店内の様子。

自信は無いけど失敗したらやり直せる精神で挑んだブラジル起業

ブラジルで独立という新たな一歩を歩み出した藤原さん。すき家での経験や繋がりを活かし、飲食店を開店しました。

「ブラジル駐在で集めた5年間分のデータベースは頭に入っていました。自分の中では、物件の場所が何を出店するかを決めると考えていて、はじめから居酒屋をやりたいとは思っていませんでした。1店舗目を居酒屋に決めたのは、まさに今の物件を見つけた時でした。日本人が多い地区で、【“バル”というブラジルの一般大衆食堂をモチーフにした日本食居酒屋を開店】というイメージが瞬時に生まれました。また、ラーメン屋だとラーメンを出さなきゃいけませんが、居酒屋であれば何を提供してもいい。料理の幅を狭めることがなく、リスクヘッジにもなると考え、居酒屋を開店しました。

ブラジルで日本食居酒屋を開店。順調に業績を伸ばしてこられたようにも見えますが、不安は無かったのでしょうか?

「これまでの人生を振り返っても、学生時代から県外で暮らしていましたし、全国転勤や駐在も経験しました。新しい環境に飛び込んで適応するのには慣れていましたし、その度に自分が成長するとも知っていたので不安はありませんでした。しかし、独立をする際には確固とした自信を持っていませんでしたが、失敗したらまたやり直せるという考えは持っていました。独立した時は36歳。まだやり直せる年齢だし、最悪全部捨てて日本に帰ればいい。負の感情抱くよりも、ギリギリに追い込まれた時にどれくらい自分の力を出せるか見たかったですし、ポジティブに新たな挑戦を楽しみました。

現在の居酒屋COCOROの物件を見つけた瞬間に、居酒屋として開店するイメージが湧きました。

“誰か”のためになるやりがい

今ではサンパウロに2店舗を展開し、ブラジル人向けのブログやYouTube活動など、日本食の良さを広めています。藤原さんの仕事のやりがいは何なのでしょうか?

自分が書いたレシピの料理や、自分が設計した料理をたくさんの人が食べてくれるのが嬉しいです。私は、厨房に立って料理を提供していませんが、レシピ作りやオペレーションの組み立てを行っています。お店で食べた料理がおいしかったよと間接的にお聞きするのは嬉しい瞬間です。」

「また、従業員として働いているブラジル人のためになっているのもやりがいです。ブラジルは貧富の差が大きく、お金も仕事も無い人が多いです。飲食業界で働いている人は最低賃金ギリギリで仕事しているケースも多々あります。雇用の場を作り、日本食の技術や日本流の働き方を教えた上で、嬉しそうに給料を貰っているところを見ると、自分がこの人たちを支えていると実感します。会社が大きくなれば雇用する人数も多くなるので、ブラジルへの貢献にもなる。そのためにも、会社をこれからも大きくしていきたいです。」

打倒すき家!ブラジルで描くビジョン

お客様からの「おいしい」という声と、ブラジルへの貢献がやりがいとなっている藤原さん。今後のビジョンはどのようにお考えなのでしょうか?

短期の目標としては、実店舗・サイト・YouTube・料理教室という4つの関係性を強め、相乗効果を生み出していけるようにしたいです。お客様がいずれかの媒体を接点にして流入し、横断的にサービスを利用してもらえる仕組みを構築したいです。店舗数を増やしたり、サイトやYouTubeを観てくれる人を増加させることで、日本人の手によって日本食のプレゼンスを高めていければと思います。」

中長期の目標としては、すき家に勝ちたいです。以前勤めていたこともありますし、ブラジル国内の店舗数ですき家に勝ちたいと思っています。そのためにも、先ほどお伝えした相乗効果を高めていけるようにしていきたいです。

落ち着いた店内。休憩を挟みランチとディナーの営業をされています。

「心・技・体」ではなく、【体・心・技】を

藤原さんのこれまでのキャリアと今後の展望についてお聞きしてきました。最後に、日本の若者へのメッセージをいただきました。

「前職で人事を務めていた経験からお話すると、成長している分野や会社で、自分と会社のビジョンが合致する組織に属してください。成功した場合のリターンを享受できる可能性が大いに広がります。長時間労働やブラックと呼ばれる場合もありますが、若いうちであればそういった環境も厭わずに飛び込んで欲しいですし、自分のビジョンと会社のビジョンが同じであれば、ビジョン達成のために頑張れるはずです。」

「私は学生時代に剣道に打ち込んでおり、【心・技・体】という基本の考えがありました。私の中での大事な順番だと【体・心・技】となります。そもそも、体が動かないと何も行動に移すことができません。”体が資本”と言われるとおり、健康第一ですし、まずは動いてから物事は進みます。次に自分の行動を分析して、どのように改善すれば良くなるかを考える。継続するならそのまま続けるし、辞めるならその場で撤退するかを検討する。最後に分析や継続の可否を踏まえ、足りないスキルを磨いたり、新しい知識を吸収する。若くて体が動くうちは特に何事も行動に移し、その結果を検証し、スキルを磨く【体・心・技】の順番を大切に頑張ってみてください。

 

藤原 美明

大学卒業後、ゼンショーホールディングスへ入社。初期配属ですき家の店長からスタートし、福島・山形・埼玉ですき家のエリアマネージャーを経験。入社6年目からは本社・人事部へ異動し、新卒採用を担当。海外研修制度を経て、ブラジル駐在時代には、すき家の店舗拡大に従事。その後、ブラジルで独立し、現在はサンパウロに日本食レストラン2店舗を運営。ブログやYouTubeも行う。(2023年12月現在)

☆居酒屋COCOROのHP:https://izakayacocoro.com.br/
☆YouTubeチャンネル【Izakaya Em Casa】:https://www.youtube.com/@izakayaemcasa

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