What's up 日本

環境先進国のデンマークで活躍する日本人【「空気のデザイナー」・蒔田 智則】

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エネルギーデザインやサステイナブルな視点から、さまざまな建築プロジェクトに携わる環境設備エンジニア/空気のデザイナーである蒔田さん。現在は、環境保護やサステイナブル都市として有名なデンマーク・コペンハーゲンにてご活躍されています。「空気のデザイナー」としての海外挑戦に迫りました。

蒔田 智則

新卒入社した会社を早期退職後、渡英し大学院に進学。歴史的建造物の保存や改修について学ぶ。ロンドンでリノベーション会社に就職後、デンマーク人との結婚を機にデンマークへ移住。デンマーク工科大学院にて建築環境工学修士課程を修了。2017年より現在の職であるhenrik-innovationに加わる。デンマークを中心に様々な建築プロジェクトに携わる。 三重県・いなべ市のキャンプサイトである「Hygge Circles Ugakei」のデザイン・建築を務め、日本での活動も増やしている。

Hygge Circles UgakeiのHP:https://nhcu.nordisk.co.jp/

英語と歴史的建造物に魅了された若かりし頃

「就職氷河期」で勝ち取った就職先を早期退職。そのワケとは?

―日本での新卒入社した会社を早期退職し、渡英された経緯を教えてください。

蒔田さん:趣味のスケボーで、周りに外国人のスケーター仲間が増えていきました。拙い英語ではありましたが、英語を話せるとこんなにも友達が出来る面白さを感じました。日本語を喋れたら1億2000万人と話をでき、英語を喋れるようになれば何億人と話せる可能性があるし、東京にいてもこれだけ親友ができるなら、もっと広い世界に行けばもっと親友ができると考えました。

当時、「英語を勉強したい」、「海外に行きたい」という想いが溢れると同時に、「このまま就職しててもいいのだろうか」という不安がありました。就職氷河期で内定を頂いた会社ではありましたが退職し、語学留学と大学院進学のためイギリスへ飛び立ちました。

趣味から英語への探求心が生まれた蒔田さん。会社を退職して渡英する思い切った決断をされました。【本人提供】

魅了された歴史的建造物と、もがき苦しんだイギリス生活

―語学学校から大学院に進む際、古い建物の建築を専攻された理由は何でしたか?

蒔田さん:僕が住んでいたロンドンには古い建物がたくさんあり、重要な歴史を持つ建物も多く、その魅力に引き込まれていきました。また、そういった歴史的な建築物を生かしたまちづくりというのは、将来日本でも仕事に生かせるかなと考え専攻しました。

―大学院卒業後はどのようなお仕事をされましたか?

蒔田さん:小規模でしたが、ロンドンの歴史的な建物のリノベーションを手掛ける会社にインターンで入社し、その後正式に雇ってもらいました。英語も満足にはできなかったので、いつクビになるか分からない不安もありました。ただ、ビザが2年間と決まっており、「この2年はイギリスで絶対やり切る」と決意があったので、最後までやり抜くことができました。

その後は日本に帰国し、イギリスで出会ったデンマーク人の妻と新しい生活を始めました。しばらくすると妻が妊娠し、子供を産むのはデンマーク語の分かる病院で産みたいという彼女の要望で、デンマークへ移住しました。妻は、私のためにロンドンも東京にも付いてきてくれたので、今度は私が行く番だと思いデンマークへ移住することを決めました。

デンマークでの新たな挑戦

―再び、海外でゼロからのスタートとなる訳ですが、何から始めましたか?

蒔田さん:移住して1か月もたたないうちに一番上の子が産まれました。はじめての国、初めての言語の中ではじめての子育てをしつつ、今まで経験の無いことをやってみようという気持ちがあり、模索していました。1年ほどが経ち、子供も保育園に入ったタイミングで、大学院で学び直したいと思い進学し、エネルギーデザインに関する修士を取りました。

―デンマークで大変なことや困難だったことはありましたか?

蒔田さん:デンマークで修士を取った後、仕事を見つけるのは大変苦労しました。こっちで就職するとなると、外国人となるので即戦力じゃないと取ってくれません。大学院の外国の学生も約90%は母国に帰って仕事をしますし、それくらい外国人がデンマークで仕事を見つけるのは大変です。幸運にも、今の会社が採用してくれました。一時期は資金不足でクビになりかけましたが、ここまでやってこれました。

デンマークでゼロからの挑戦。今では国内だけでなく、世界から注目されるようになりました。【本人提供】

「空気のデザイナー」としての夢【日本の住宅を変える】

新築・再開発ではなく、サステイナブルな建築を

―今後成し遂げたい目標やビジョンはございますか?

蒔田さん:2050年までにカーボンニュートラルの実現をしたいです※1。2050年に私は70歳になり、ちょうど現役を引退するタイミング。引退する時にカーボンニュートラルが達成できれば、大きな仕事を成し遂げた達成感が生まれると思います。建設業界は二酸化炭素の排出に大きな責任のある業界だと思うので、仕事のやりがいがあります。

―デンマークに比べ、日本は環境に対する意識が低いようにも感じますが、蒔田さんの目にはどのように映っていますか?

蒔田さん:デンマークは環境やサステイナブルを「ブランド」として国益にしていますし、変化のスピードがものすごく速いです。小国なので機動力がありますし、投票率は約90%を記録するため、国民の意見が政治に直結しています。国民性と政治への信頼から変化の速さを体現していると言えます。一方、日本は変化のスピードがゆっくりに見えます。大きな国なのでしょうがない面もありますが、国民全体が政治に対してもっと関心を持つべきだと思うし、もっと変化のスピードを速めていくべきです。

―2050年までにカーボンニュートラル達成に向けて蒔田さん自身としてはどのようなアクションを取りたいとお考えですか?

蒔田さん:色々なアクションを取りたいです。その中でも、何か新しい建材を作ってみたいと思っています。コンクリート、鉄、ガラスなどの環境への負荷が大きい建材に代わるような建材が産まれていく事が、カーボンニュートラル達成の大きなカギなのではないかと思います。

2050年までにカーボンニュートラル実現に向けて、今この瞬間も活動されています。インタビューした際の「もっと仕事がんばろ」とボソッと呟かれていたのが印象的でした。【本人提供】

日本でうごめき出した新たな芽

―日本での活動も増やしていくとのことですが、現状はいかがでしょうか?

蒔田さん:おかげ様で日本の仕事もだんだんと増えています。数年前に「いなべ市グランピングサイト」プロジェクトのコンペに勝ち、デンマークの設計事務所と三重県いなべ市と国を跨いだコラボレーションで新しいものを創ることができました。そのプロジェクトが国内外問わず、様々な媒体に扱っていただき、徐々に仕事が増えて嬉しい限りです。
先日、日本エコハウス大賞の審査員を初めて務めました。審査員の経験ができた嬉しい気持ちの反面、デンマークの仕事の方がレベルは高いと感じ、日本はもっともっと変えて行くべきだと改めて思いました。今後は、日本とコラボレーションを増やして、いいものを創っていきたいです。

―日本は環境への配慮が遅れている一方、日本の良さはどのような点に感じますか?

蒔田さん:日本は経済大国で、デンマークで学んだ知識や経験を日本という大きなマーケットで色々チャレンジできるのが良い点です。デンマークだとマーケット自体が小さいため、少ないパイを多くの競合で争うような構図です。その反面、日本の方が圧倒的にマーケットは大きいし、仕事の種類も多いので色々チャレンジすることができます。
デジタルツールを使いこなすデンマークの仕事。職人の国だなと思わせる日本の仕事。どちらの国も仕事の進め方は違うかもしれませんが、両国から刺激を貰いながら仕事が出来ています。

日本と海外のコラボレーションも増やしていく野心を語っていただきました。【本人提供】

日本の若者へ送る2つのメッセージ

―最後に日本の若者へメッセージをお願いします。

蒔田さん:若い世代にはものすごく期待をしています。その中で、「デジタルツール」は絶対に使うべきですし、若い人だからこそ使えるようになってください。私も上司よりはデジタルツールに慣れていますが、若い人ほどデジタルツールには慣れているはずです。経験に裏打ちされたことはどうしても年上には勝てないですが、デジタルツールだけは一番になれる。若い人にとって大きなアドバンテージですし、どの業界にも共通することだと思います。

また、「コミュニケーション能力」を身に着けてください。欲を言うと、英語を使ったコミュニケーションができるように頑張ってみてください。コロナ後、多くの仕事がオンラインに移行され、どこでも仕事が出来たり、オンラインで済ますことが出来る世界になりました。しかし、イノベーションは決して一人の考えで生まれるのではなく、誰か他の人とのコミュニケーションの中から生まれると思います。基本的ではありますが、自分の意見をしっかりと持つことだと思います。デジタルツールと、リアルのコミュニケーションの両方を大切にして欲しいです。

 

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