What's up 日本

フランスで大人気フレンチレストランのシェフは日本人!【restaurant SO 高橋 創】

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フレンチの本場で輝く高橋シェフが語る「一歩目を踏み出す重要性」とは?

パリから高速鉄道で約1時間半。フランス東部にある旧ブルゴーニュ地域圏の首府で、フランス随一のワイン産地の玄関でもあるディジョンに到着します。美食の街としても名を馳せるこの地で、フレンチレストランを営む日本人がいます。「レストランSO」のオーナー高橋 創さんです。調理専門学校時代からフランスに精通し、現在もフランス人に愛されるフレンチを提供されている高橋さんにインタビューをしました。

「自分のお店を持つ」目標から逆算して歩んできた料理人のキャリア

ご両親の影響で幼い時から料理に馴染みがあった高橋さん。はじめは自分が食べるために料理をしていましたが、とあるきっかけから「料理は人を喜ばせられる」と気づきました。

高橋さん:両親の実家が石川県にあり、送られてくる魚を両親と捌いていたのが料理との出会いでした。はじめは自分が食べるために料理していましたが、祖母が癌で亡くなる前に自分の料理を持って行ったところ、何も食べなかった祖母が喜んで食べてくれました。その瞬間に、料理は人を喜ばせることができると実感しました。

また、料理の鉄人をはじめとする料理番組が人気を博しており、日常的に料理人の姿を見る機会が多かったです。特に、フレンチのシェフは華やかで、自分が目指したい姿がそこにありました。人に喜んで貰えて、華麗でカッコいいフレンチのシェフを目指すことにしました。

「レストランSO」の素敵な店内。幼少期の料理に対する思い出がシェフとしてのキャリアを作りました。

遠回りに見える選択が目標への近道に

高校卒業後に調理専門学校へ入学し、フランスへの留学も果たしました。2年間の専門学生時代を経て日本で働くことになりますが、「自分のお店を持つ」目標から逆算してキャリアを歩み始めました。

高橋さん:「自分のお店を持つ」目標から逆算し、開業した時に必要な知識を、料理業界に入る前に学ぼうと考え、社会人1年目はワインの販売店とチーズ屋さんで働きました。ワインのことを知っていればワインソムリエがいなくても自分でできますし、チーズのことを知っていれば自分で選定ができます。周りは料理業界に進み、バリバリ働き始めていましたが、1年は勉強の期間だと決めて料理とは少し離れた選択をしました。

遠回りに見えるかもしれませんが、キャリアの序盤でやっておいた方が、後々柔軟に対応できると考えました。30歳前後で店を開けるタイミングで勉強するとなると、若い時より時間がかかりますし、若い時の方が頭は柔らかいので色んなことを吸収できます。目標から逆算した結果、遠回りと思われるかもしれませんが、自分にとっては近道である選択をしました。

また、東京のフレンチで働く際にも、フランス人シェフがいるレストランを選んで働きました。将来的にはフランスへ行きたい想いがあり、フランス人のもとで働けばフランス語の勉強もできる。時間を無駄にはしたくなかったので、仕事にプラスして語学の勉強ができる環境を自分から選びました。

短期と長期のビジョンや目標を持ってキャリアを選択する思考

「自分のお店を持つ」という長期のビジョンに向かって、キャリアを選択してきた高橋さん。ビジョンを立てる際に重要な点をお聞きしました。

高橋さん:ある程度大きな目標を持ちつつ自分の現在地を把握し、どれくらいの距離があるのかを理解していることが重要です。長期的な目標を立てた上で、その目標へどのようにアプローチしていくかの指針として短期的な目標も重要になります。みなさんも1年後、3年後、5年後、10年後とそれぞれビジョンや目標を持って、そこに対して頑張りながらキャリアを歩んでみてください。

ミシュランに掲載される有名店となっています。

料理を通じて見える日本とフランスの違い

本場フランスでフレンチシェフとしてご活躍されている高橋さんには、日本とフランスの違いをどのように感じているのでしょうか?

高橋さん:まず、お客さんとお店の立場の考え方が違います。日本は、「お客様は神様」の考えが根底にあります。一方、フランスはお客さんがお店を選ぶのと同時に、店側もお客さんを選ぶ考えがあります。つまり、お店とお客さんがイコールの関係で結ばれています。日本に帰ると、やりすぎだろってくらいのサービスを目にすることは多々ありますし、「断ってもいいんじゃないかな」と思ったりもします。

また、日本料理は「引き算」の料理であるのに対し、フレンチは「足し算」の料理です。日本は物流や鮮度を保つ保存が発達していて、素材そのままの味を大切にする料理です。いかに鮮度が良くて美味しい素材本来の味を落とさずに、手を加えていくかが求められます。

フランスは、国土が広くて物流や保存法が劣るので、どうしても食材の鮮度も味も落ちてしまいます。そのためフレンチには、いかに手を加えて料理としての完成度を上げていくかが求められ、調味料など足し算しながら食材の負の部分を補う考えがあります。ソースのバリエーションが豊富なのはその表れです。料理の構成を考えたり、足し算をしながら料理を完成させる点に面白さを感じています。

料理業界という「狭い業界」においては、どっぷり業界に浸かって学んで欲しい

フランスで著名なシェフの一人となった高橋さんに、これから料理人を目指す人たちへのアドバイスをお聞きしました。

高橋さん:まずは、やると決めたら辞めないこと。私が専門学校で知り合った半数は、料理人を辞めています。ある程度続けていればライバルは減っていくので、それなりのところまで辿り着けます。辞めないことはスゴイ大事なことですし、続ける努力を頑張ってください。続けるという意味でも、のめり込むくらい業界にどっぷりと浸かって学んでください。その方が吸収も早いですし、色んなものを見ることができます。海外の料理を学びたいなら、海外で学ぶことも重要です。確かに東京には星付きレストランはたくさんありますが、海外の本場を見ないと分からないこともある。やると決めたら業界の知識や料理人としての腕を磨き続ける努力をしてください。

ただ、自分に合わないと感じたら自分に合う環境を探したり、環境を変えるのはとても大切です。A店で上手くいかなかったとしても、B店で上手くいく可能性があるし、店のやり方や周りのとの関係性など影響を受けて上手くいかないだけかもしれません。自分が環境を変えやすい状態を作るという意味で、辞める時の辞め方や関係値の構築を大切にしてください。料理の業界は非常に小さいコミュニティですし、シェフ同士で繋がっています。辞めることは悪いことでは無いので、辞め方には注意して欲しいなと思います。

一歩目を踏み出し、とりあえずやってみる

最後に、日本の若者へのメッセージをお聞きしました。

高橋さん:自分のやりたい事に対して、一歩目を踏み出し、とりあえずやってみてください。挑戦しなかったら悔いが残りますが、挑戦したら失敗という答えが出るし、正解という答えも出ます。誰も失敗することが悪いと思ってないし、失敗するのも人生で、その失敗を糧に頑張ることができます。成功よりも失敗の方が学ぶことは多いし、価値があります。失敗だと思っていたことも長期的に見たら成功だったかもしれません。だから、挑戦を怖がらずに一歩目を踏み出し、とりあえずやってみてください。

高橋 創

Restaurant SO オーナーシェフ

千葉県出身。辻調理師専門学校からフランス校へ留学。専門学校を卒業後、チーズの輸入会社やワインショップでの1年間の勤務を経て、千葉県柏市のレストラン『ル・クープル』にて勤務。その後、東京・恵比寿のシャトーレストラン『タイユヴァン・ロブション』、2004年からは同所『ジョエル・ロブション』で働き、再び渡仏。ブルゴーニュ地方ディジョンの一つ星レストラン『ステファン・デルボード』などで経験を積み、2012年12月、『レストラン ソウ』をオープン。フランス人に愛されるフレンチを提供している。
Facebook:https://www.facebook.com/RestaurantSo

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