What's up 日本

ドイツ歴30年 日本食レストランオーナーが語る、日本とドイツの違いと日本への想い【日本食レストラン「天晴」 渡邊 寛之】

What's up 日本

ケルン在住 日本食レストラン「天晴」オーナー・渡邊さんインタビュー

「ベルリンの壁崩壊」から3年後の1992年。料理人として日本のレストランから転勤のため渡独。以降約30年に渡り、ドイツの日本食シーンで料理人としてご活躍してきた渡邊さん。ドイツを知り尽くす渡邊さんに、客観的に見た日本とドイツの違いと日本への想いなどをお聞きしました。

天晴HP:https://www.appare.de/

料理を通じて感じた、日本とドイツの違い

日本を離れて30年。渡邊さんは、日本食レストランの料理人としてドイツを主戦場にしてきました。約5年前に「天晴」を開業し、長年の目標だった自分のお店で日本食を提供しています。ケルン在住の日本人のみならず、ドイツ人にも愛される料理を振舞われています。そんな渡邊さんには、日本とドイツの違いはどのように見えているのでしょうか?

渡邊さん:料理人の視点だと「水」が大きく異なります。日本は「軟水」で、とても柔らかく舌触りがなめらかです。しかし、ドイツは「硬水」で特にケルンは非常に硬い。動物性の出汁を引く時は大差ありませんが、昆布の出汁を引く場合は味が出ませんし、お米も炊きづらいです。日本食は繊細で、使用する水で味が大きく変わるので、軟水を買ってきて使用しています。

人間性の観点だと、ドイツ人と日本人は似ているとも言われますが、ドイツ人は協調性を持ちつつイエス・ノーをはっきり言います。物事が決まるまでは自分の意見を明確にし、反論しながら議論を行う反面、物事が決まったらちゃんと従います。時には、喧嘩もしますし、文句も言いますが、決まったら忠実に従います。日本だと、中途半端な議論で物事が決まり、その後に文句を言うケースも少なくないと思います。決まるまでは反論や文句も言うけど、決まったら守る点は明らかに違いますし、ドイツ式の方がフェアだと感じます。

一方、ドイツ人が日本語を話すと、不思議と日本人になるのが面白い点です。ドイツ人同士がドイツ語で話すと、きつい言葉できつい話をしますが、日本語を話すと自然と優しくなります。ドイツ語は強く言いやすい言語で、お互いに言い合うから失礼にも当たらないだと思います。日本語は、本心をはっきり言わずオブラートに包んだりするので、そういった言語に表れる文化の違いは面白いです。

天晴の店内。落ち着いた空気が流れる。

外から見る「故郷・日本」とは

長年ドイツに在住し、ドイツの文化に精通する渡邊さん。客観的に見た日本についてもお聞きしました。

渡邊さん:右寄り、左寄りなどはありませんが、皇室の重要さは改めて感じますし、偉大な日本の文化です。ヨーロッパのドイツやイタリアなどは、皇室を自分たちで廃止しましたが、今になって皇室の重要性を実感している風潮があります。世界一長く続く皇室を持っているからこそ、皇室の在り方や、重要さについてもう少し考えてもいいのではないでしょうか。

あとは、日本人の仕事に対する考え方です。

―それはどういうことでしょうか?

渡邊さん:日本人は、仕事に対して真剣に取り組める姿勢を持っています。日本に帰国した際、新幹線の清掃員仕事ぶりに強く感動しました。給料は高くないかもしれませんが、あのクオリティの綺麗さを超短時間でこなす仕事ができるのは日本人しかいないと思います。ある種の職人気質と言いますか。ドイツだと、この給料だからこれくらいの仕事をするという価値観がありますが、日本人は仕事に対して真剣に取り組める姿勢を出せます。仕事と幸せがイコールの関係で、密接に関わっている日本の文化はいいところです。

和を感じるものが店内の至る所にあります。

20代の1年はものすごく価値が高い。だからこそ大切に

最後に、「渡邊さんが大切にしている考え」と「次世代へのメッセージ」をいただきました。

渡邊さん:10代の頃から大切にしている考えが【桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す】です※1。桃やスモモだから花が咲くし、実は生るし、木陰にもなる。木は何も喋らないけど、そこには人が集まり、やがて道ができてくる。そういう風になりたいと思ってはいますが、まだまだ遠い。全然近づいてもいない。まだまだです(笑)。

―これから料理人を目指す方や、海外を志す料理人へアドバイスはありますか?

渡邊さん:自分が何をやりたいかを考え、明確に決めてください。料理人として漠然とドイツに来ても、「なんでドイツ?」となります。ドイツは治安もいいし、日本人もそこそこいるけど、日本食なら日本の方がレベルは高い。レベルの高い環境に身を置いて、自分の技術を身に着けることが料理人にとってはとても大切です。フレンチが学びたいのであれば、フランスで修行すればいいと思うし、日本食なら日本。まずは、自分がやりたいことを決めるのが最初のステップです。自分のやりたいことに従い、海外がベストなら海外で挑戦してみてください。

―最後に、日本の若者(Z世代)へメッセージをお願いします。

渡邊さん:20代の1年はものすごく価値が高いです。1年でどれだけ吸収できるかが肝になるでしょう。年齢を重ねると体力的にも精神的にもきつくなるし、結婚などのライフイベントで新しい挑戦がやりづらくもなります。だからこそ、若い時じゃないとできないことがある。「あの時やっとけば良かった…」と後悔しないような生き方をしてください。その中でも、要領で稼ぐのか、時間で稼ぐのかなどの性格やタイプを加味して、自分にとって一番いい選択をしてください。今の若い子は頑張っている。これからも頑張ってください!

 

渡邊 寛之

高校卒業後、料理人の道へ進み、日本のレストランで料理人として勤務。1992年に会社の辞令により、ドイツ・フランクフルトの系列店へ異動。以降、日本食料理人として約30年間ドイツで活躍。およそ5年前に現在オーナーを務める「日本食レストラン『天晴』」をケルンで開業。(2023年11月現在)

天晴HP:https://www.appare.de/

※1桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す(とうりものいわざれどもしたおのずからみちをなす)《「史記」李将軍伝賛から》桃やすももは何も言わないが、花や実を慕って人が多く集まるので、その下には自然に道ができる。徳望のある人のもとへは人が自然に集まることのたとえ。
【桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す goo辞書】https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%A1%83%E6%9D%8E%E3%82%82%E3%81%AE%E8%A8%80%E3%82%8F%E3%81%96%E3%82%8C%E3%81%A9%E3%82%82%E4%B8%8B%E8%87%AA%E3%82%89%E8%B9%8A%E3%82%92%E6%88%90%E3%81%99/

 

タイトルとURLをコピーしました