What's up 日本

海外で鍼灸治療院を開業・メキシコ人に愛される“健康の提供”を目指して【かつの鍼灸治療院・勝野 馨太】

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メキシコ・かつの鍼灸治療院の勝野院長インタビュー

メキシコの首都メキシコシティで、日本式の鍼灸治療を提供しているかつの鍼灸治療院。治療院を開業された勝野さんは、メキシコに来てはや11年。ある本をきっかけにメキシコへ渡り、ご縁で治療院を開業できたと語ります。今回は、かつの鍼灸治療院の勝野さんにインタビューしました。

鍼灸のパワーに魅了され鍼灸師の道へ

日本で鍼灸治療の基礎を学び、現在はメキシコシティに2つの治療院を持つ勝野さん。鍼灸との出会いは何だったのでしょうか?

はじめに、鍼灸師を目指そうと思った経緯を教えてください。

勝野さん:私が小学生の頃、父が虫垂炎を患った際に、手術が一般的な治療法だと思いますが、父は鍼灸の先生のところで治療を受ける選択をしました。そして手術を受けずに、鍼灸の治療だけで完治したんです。「なんで?!」という疑問が出てきて、強烈な記憶として残りました。自分も父の虫垂炎を治した先生のようになりたいと思い、鍼灸の専門学校へ進学し、鍼灸師の免許取得後に鍼灸整骨院で勤めながら、その先生のもとでも学ぶことになりました。

鍼灸師を目指した当初から海外への想いはありましたか?

勝野さん:中学・高校・専門学校の修学旅行や研修で海外に行く機会があり、海外に対してとても興味がありましたね。最初に勤めた治療院を退職した後に海外で一人旅をし、海外で活動したい気持ちが強くなりました。

少年時代に受けた衝撃が鍼灸の道への一歩となりました。【本人提供】

“本”をキッカケに縁を感じたメキシコへ移住を決意

ひとり旅を終了後、すぐに渡墨しましたか?

勝野さん:まずは、知識や技術、経験値などを得てからではないと海外で何の役にも立てないんじゃないかと考え、鍼灸整骨院での勤務をしつつ、師匠のもとでも引き続き学ばせて頂きました。この決断は今振り返っても間違っていなかったと思います。

知識や技術を身に付け、日本を飛び出したと思いますが、メキシコを選んだ理由は何でしたか?

勝野さん:「国境なき鍼灸師をめざして」という本を読んだ際、「自分のやりたいことはこれだ!」と思いました。本の舞台はメキシコとグアテマラの農村地域でした。また、当時日本で仲良くなったドミニカ共和国出身の友人が帰国する事になり、そのタイミングでホームステイをさせてもらうことになります。ドミニカもメキシコもスペイン語が公用語なので、語学力を身に付けるためにドミニカで3か月間、メキシコで半年間語学学校に通いました。

仮に今日本に帰ったら、メキシコに行くか分からないと思い、ドミニカでの語学学校終了後にメキシコへ渡りました。はじめは「怖い」イメージがありましたが、住みやすく人も優しいメキシコの良さを肌で感じ、印象はすぐに変わりましたね。本の舞台ということもそうですが、多くの出会いや偶然が重なった部分もあり、メキシコに縁があったんだと思います。

日本人として誠意を持って施術をする

メキシコへ移住し、半年間は語学学校に通いながら訪問の施術を行っていた勝野さん。徐々に口コミが広がり、自分の治療院を開業するまでになりました。色んな人の協力が開業できた要因だと語ります。

治療院を開業するにあたり、大変なことはありましたか?

勝野さん:いろんな方から「大変だったでしょ?」と聞かれますが、苦労した記憶はあまりないんです。私を知っている方からは「あの時は大変だったよね」と言われることはありますが、私としては本当に多くの方に助けていただいて今があります。自分の苦労よりも「あの時はこの方にお世話になった…」という記憶の方が浮びます。そんな多くの「お陰様」で今の自分があります。

メキシコ人と信頼関係を築いたり、施術をするにあたり意識されていることはありますか?

勝野さん:日本人であることを大切にしていて、誠意を持って対応するようにしています。全体の7割はメキシコ人の患者様ですが、もし日本でやっていたとしても、選ばれるようなクオリティの施術を心がけています。事前の説明はしっかりしますし、施術前後のチェックも入念に行います。場合によっては病院を紹介しています。また、当たり前ですが施術で変化を出すことは絶対に必要な要素となりますので、鍼灸師としてのプライドを持って施術しております。

身体の変化を通じて「患者様に喜んでもらう」という点に国境は無い

仕事のやりがいはどのような点に感じますか?

勝野さん:治療院に入ってこられた時の表情と、帰られる時の表情がいい意味で変わっているのを見る瞬間は、いつになっても嬉しいです。この瞬間は日本もメキシコも同じで、国境は関係ありません。患者様が施術によって楽になり、喜んでいただけるのはいつでもどこでも嬉しいですね。

今後のビジョンやキャリアパスはどのようにお考えですか?

勝野さん:メキシコで鍼灸師の資格が取れるレベルの学校を創れたらいいなと考えています。現在も鍼灸のセミナーを開催しており、日本の技術を伝えることでメキシコの鍼灸師の方々に喜んでいただけているのは嬉しいです。しかし、あくまでもセミナーなので、資格が取れる学校を開校できたらと夢みています。

また、健康の複合施設の創立も夢の一つです。メキシコは世界一の肥満大国で、健康に対する意識が低めです。日本人なら常識と考える健康の知識を持ち合わせていない人も多く、健康に対する認識が甘いと感じることもあります。医師・鍼灸師・栄養士・ピラティスやヨガのインストラクター・トレーナーなどが集まり、健康の幅広い知見やサービスを提供する施設ができれば、メキシコの皆さんの健康をより良くできると思うので、将来達成したいです。

今の自分があるのはメキシコという国が受け入れてくれたからだと思います。だからこそ、メキシコのために何かしら還元していきたいです。同時に日本の良さも伝えていければと思います。

キッカケは些細なことでも挑戦を

これまでのキャリアやメキシコで施術する際に意識されていること、今後のビジョンをお聞きしてきました。最後に日本の若者へのメッセージをいただきました。

勝野さん:日本は、世界を見渡しても上位に入る恵まれた国です。街は整い、商品の質は高く、金銭的にも環境面でも恵まれています。世界を見渡すと、チャレンジしたくてもできない人たちがたくさんいらっしゃいます。日本人であることで既にチャレンジできる要素が揃っているので、ぜひ一歩踏み出してみてほしいです。いろいろ考えてしまうかもしれませんが、踏み出したらあとはどうにかするしかない。まずはチャレンジしてみて、何とかしなくてはいけない状況に置かれた時に考えて何とかする。海外に行く場合も言語が完璧ではなくても、まず行ってみると生きるために言語を習得しようとしますし、やるべき事が見えてきます。時間は有限です。些細なことでもやってみたいことがあり、それが命に関わるような事でなければ挑戦してみてはどうかなと思います。

 

勝野 馨太(カツノ ヨシタカ)

1983年生まれ。福岡県福岡市出身。鍼灸師・柔道整復師免許を2005年に取得。福岡の整骨院、鍼灸院にて修行後、2014年1月に本格的に渡墨。メキシコシティを拠点に、アメリカ大陸で一番患者様を笑顔にできる治療家を目指し、日々、鍼灸や整体、カイロプラクティック等の施術を行なっている。現在、活動範囲をメキシコシティ外にも拡大中。(2023年12月現在)

☆かつの鍼灸整骨院HP:https://www.cajkatsuno.com/
☆かつの鍼灸整骨院Instagram:https://www.instagram.com/c.a.j.katsuno/

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